2020年6月4日(1725)

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2020年6月4日(1725)

 6月は飲料メーカーの繁忙期のうちの1つだ。今年は例年より平均気温が高く、比例して売上も伸びている。気温に任せきりではいけないが、売上を左右する大きな要因の1つなのは間違いない。  個人的には暑い暑いと文句を言いながら、サラリーマンとしてこの気温が続けばいいと願っている同僚たちを見ていると、その対比が面白かった。もちろん、私もその矛盾しているサラリーマンのうちの1人。  猛暑予測の今夏に発売する新商品の目玉である、特定保健用食品という認可を受けた炭酸飲料と紅茶を売り出す為に、営業部隊である私たちは連日売り込みや売り方提案の商談を詰めていた。  明日に控えた大口商談の為の提案書をまとめている時、後輩の堀が外勤から帰って来たのが見えた。汗を拭きながら、まず真っ直ぐに共用で置いてある冷蔵庫に彼は向かった。  生産部から大量にもらった自社製品の炭酸を冷蔵庫から取り出したと思ったら、物凄い勢いでごくごくと飲み干している。よくもまあ炭酸をあんな速度で飲めるものだと感心する。その発想がもうおばさんだ。若い男の子は身体の造りが違うなどとすぐに考えてしまう。  飲み終わったと思うと、堀は得意気な顔をして課長に報告しに行った。たぶん、受け持っているチェーンへの新商品登録と、大型販促が決まったのだろう。その為に、昨日遅くまで提案書を作っていたのを知っている。  席に戻って来た堀はにやにやした顔で私の方を見てきた。隣の席なので、顔を向けていないのに、嫌でもその雰囲気が伝わってくる。  伝わってくるが無視をしていたら、彼は私のパソコン画面の横に顔を持ってきて無理矢理視界に割り込んできた。
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