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抄が仕事を終えてマンションに帰宅した時には、すでに時刻は夜半を回っていた。
「あー……つっかれたぁ……」
『久ッ々に骨ガ折レル仕事ダッタナ……』
肩の上に留まる烏とぼやき合いながらも足を引きずるようにエントランスのオートロックを開き、エレベーターに乗る。
実家の都合や自分の生業やら同居人の生い立ちやら諸々の関係で、住処にはセキュリティがしっかりした物件を選んだのだが、こういう時ばかりはそんなセキュリティを鬱陶しく感じる。
「あー、さっさと寝たい……」
『凛、寝テッカネェ』
「さすがに寝てるだろ。1時回ったぞ……」
そんなことを言い合いながら目的の階でエレベーターを降り、自分の部屋の前に立つ。
鍵を開けて中に滑り込むと、案の定室内は真っ暗だった。
「……!」
だが抄の五感は、その闇の中に微かな風の流れを掴み取る。
それを『異変』と捉えた抄は背中に負っていた日本刀の柄を握った。
抄の気配の変化を悟ったのか、玖坊は抄が何かを言うよりも早く闇の中へはばたいていく。
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