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「わっ!?」
そんな抄にようやく気付いたのか、夜風に翻るカーテンの向こうにいた人物が驚愕の声
を上げる。
その人物に向かって刃を振り上げかけて……抄は慌てて刃の切っ先を下げた。
「帰ってたの? 抄くん」
モゴモゴとカーテンの幕をたくし上げて現れたのは、この部屋の同居人である凛だった。
この闇よりも深い漆黒の瞳を煌めかせた凛はキシシッと笑いながら無邪気に抄を見上げる。
そんな凛に、抄は思わず額に手を添えるとガックリ肩を落とした。
「……凛」
「お帰りなさい! 抄くん!」
「……いつ狙撃されるか、外からかっさらわれるか分かんないんだから、窓は開けるなって、いつも言ってるだろ……」
「うん、そこはごめん。でも帰ってきたらまず『ただいま』でしょ?」
「……ただいま」
「うん、お帰り! あっ!! 靴履きっぱなしっ!! ちゃんと玄関で脱いでこなきゃダメでしょー!!」
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