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鏡よ鏡
中学生の頃に買った鏡が遂に寿命を迎えてしまった。
「あっちゃ~。折れちゃった」
鏡面部分は無事だがプラスチック製のスタンド部分が経年劣化したのだろうか、ぽっきりと二つに折れてしまったのだ。
「結構気に入ってたんだけどなぁ」
当時お小遣いを貯めて買った卓上鏡だったが月日は無情に流れ、アラサーとなった私には少しばかり可愛すぎる鏡だった。
「仕方がない、か……」
昔は自分を如何に可愛く見せるかに夢中だったのに大人になった現在は鏡を見る時間も短くなった気がする。
睡眠不足、そして食事への気遣いも減り大人ニキビも増える一方だ。
私も遂に鏡を見る度に大きな溜め息が出てしまう年頃となってしまったらしい。
「鏡なんて無くても生きていけるど社会人として必要最低限の身だしなみはしておかなくちゃダメだしなぁ」
仕事が忙しいというのを理由に気づけば自分に構ってあげなくなっている──それに慣れてくると綺麗になりたいとか可愛くなりたいという願望も徐々に薄れていった。
「面倒臭いけど仕事終わりに買って帰るか」
鏡を買うのが面倒臭いとか言っている時点でどうかしている。
壊れてしまった鏡を燃えないゴミの袋に入れて私は何時も通り出勤した。
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