第一部・道林ミカの憂鬱と画策/(1)きれいなだけじゃない、お姉さんのおはなし

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 なーんてブラ線にかかる髪をそっとかきあげ、柔らかい口調で言われたときにゃあ、  ――鼻血噴いて死ぬかと思った。  あれで彼氏持ちなんてやべーな。彼氏、榎原さんにゾッコンじゃん絶対ズッコンバッコンやってんじゃん? と。  Cカップではあるものの、胸が離れているゆえ谷間が寂しいことになってしまう道林にとっては、榎原紘花のボディは憧れそのものだった。スポーツブラをつけて普通谷間なんてできない。しかも。  テニスをしている最中、しっかりと、まぁるいおっぱいが揺れるのを道林の目は確認した。上げ底ゼロ。まじ本物だ。ヌーブラつけてまでテニスする女なんていないし。「きゃっ!」なんて可愛い声をあげる榎原紘花のテニスの下手くそっぷりは、テニスをしにきていた他の客の目を猛烈に引いていた。  蝉のように路上に倒れている男は一人二人ではなかった。熱中症なんかじゃない。榎原紘花に『当てられた』のだ。  それだけならば『ただのきれいなお姉さん』どまりで終わるかもしれない。が、道林ミカが榎原紘花を『尊敬すべき素晴らしい女性』と認識するに至ったのは、事業部に配属された直後の経験が関係している。
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