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「……奥さんて基本旦那よりも子どもが可愛いもんじゃないのお? うちなんかもろにそーだぜー」――来た来た。こっから始まるのだ、父親に冷淡な娘二人のお話が。えーとお姉ちゃんがいま大妻女子に通ってんだっけか? 「三人集まるとなんとやら、ってな……結束力固いんだもんうちの女性陣」
悲しげにグラスの氷に触れる宗方を見る蒔田の目はやや冷ややかなものとなる。
――その憂さ晴らしをできる相手が仕事関係、と来たものだ。
宗方がやたらひとと飲みたがる事情も頷ける。ただし、それは連鎖なのだ。
お父さんがいない
→母子三人で仲良し
→お父さんハブられる
……の繰り返し。
現状を打開したいのならばその連鎖をどこかで絶たねばならぬのだが、この事業部長がそれに気づいている様子はない。いや、見て見ぬふりを貫いているのだろう。ひとを見る目は確かだから。
「――と。いうわけで」わざと声を大きくして発言する。咳払いするおまけつき。「おれはサクッと帰って創ちゃんを抱っこして嫁さんとイチャコラせねばなりませんので。――栗原くん、おれのぶん――」
蒔田のこの声は遮られる。
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