熱愛シンドローム～side story of 『恋は、やさしく』～ 【完結】

閑話休題・蒔田一臣の煩悶と面倒／あの、そろそろいいっすか、宗方さん

　――蒔田ぁああ！　おれの、おれたちの榎原ちゃんを……！　／いやおまえらのちげえだろ！　おれの、おれのだ。……想像の世界だけでも彼女を弄ぶことはおれが許さん。つぶすぞ……！／まえまえから思ってたんですけど。そんなに美人さんなんですか、うちにいた蒔田さんの奥さんて……。／地元ですっげ有名だったんだって。おれの奥さんが同じ長野の出身で学年違うけど知ってたくらいよ。／ああそうそう、榎原ちゃんから聞いた限りでは、父子家庭ってことバラすとだいたい難色を示す感じだったんで、むしろ積極的に明かした、みたいな。／蒔田くんはクールな感じなのにさりげにむっつりですねえ。頑張ってください、ね。／いや頑張るべきは柏谷さんのほうじゃないですか。評価ぜーんぶおれに押しやがって。仏みたいな顔しといてさりげにドＳですよね柏谷さん。／あ、蒔田さん。だいたい、……四千円でいいです。たぶん大丈夫だと思います。／悪いな。全部押し付けちまって。／そうそうフォローが肝心だよ蒔田くん。／あんた……。おれが統括Ｔのリーダーになったら、覚えておいてくださいよ。／やる気があるようでなによりですね。ところでぼくはまだきみに追い越されるつもりはないよ。／……おつり。あの千円。／要らん。迷惑料だ。／で、でも……。／じゃあおれが。／桐沢おまえは黙ってろ。……足りなかったときにでも遣ってくれ。／あ、の、手……。／ああすまん。／さりげに女の子の手ぇにぎにぎするとか……無自覚ってこええ……。／なんの話だ、桐沢。