閑話休題・蒔田一臣の煩悶と面倒/あの、そろそろいいっすか、宗方さん

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「――いや。おれ、べつに、徹夜でヤるってわけじゃあ……」苦笑いするその顔がなかなかキュートだ。誰か倒れる音を聞いた。……かわいそうに、さっき手を握られた栗原に違いない。来年の新人辺りイケメンを配置せねば栗原が気の毒なことになる。下手をすれば内館牧子の描いた不倫ドラマの開幕だ。残念ながら栗原はのりピーにはなれないが。――宗方の思考さておき蒔田。「まあ、とにかく、……ありがたく受け取っておきます……」  再び頭を下げるのを見届け、宗方は桐沢と腕時計談義を再開。宗方のいる位置から座敷の出入り口へは数分足らず――のはずなのだが。やはり、あちこちで蒔田はいじられていた。座敷の奥から出口への一本道がとんだ障害物競走である。つと見ればなんと、知らないサラリーマンのおじさんからリポビタンDを貰っていた。よ! 兄ちゃん若いねえ! と美男子の肩を叩く大きな声がこっちまで聞こえてきた。殊勝に頭を下げるのが蒔田の可愛らしいところである。  さぁて。  うちの娘二人もいずれ嫁に行く。そのとき、……  寂しいんだろうなあやっぱり。 「もー。宗方さんさっきから聞いてます!?」
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