1/3
前へ
/125ページ
次へ

 ある休日の昼下がり。  窓の近くに設置してある、時期には少し早い風鈴が「チリリン」と鳴るのを聞きながら、俺が居間でゲームをやっている時ーー  ピンポン  と、呼び鈴が鳴った。  面倒だったので無視してゲームを続けるが、  ピンポンピンポンピンポン!!  と、連打される。  しかし、あえて無視した。  チリリン、と風鈴が鳴り響く。  ーー少しして、 「しばらく泊めて!!」  と、幼馴染みの真昼が、汗を滝のように流しながら、ベランダの開いている窓から飛び込んできた。 「おk、とりあえずシャワー浴びてこい」  そういって真昼を見ずに居間のソファーに腰掛けたまま、ゲームから手と目を逸らさずにそう返す。  真昼は勝手知ったる他人(ひと)の家に靴を脱いで「おじゃまします」と声に安堵を含ませながら上がり込む。  ……視界の端、キャミワンピを着て薄く化粧をしている真昼の姿を見て、俺は「らしくない」と思った。  真昼が浴室に向かったのを確認すると、俺は【PAUSE】と画面に表示させて、手前の机に放り投げていた携帯を手に取る。 『真昼が来たけど、何かありました?』  そう送ると、すぐに返答が返ってきた。 『ゴメン、今から引き取りに行く』  そう簡素な返答に、俺はため息を吐いて、 『いや、来んなし( ´-ω-)=3』  と、送り返してやった。 『でも迷惑がかかる』  と、尚もしつこく食い下がる相手に、 『今更だし、変に拗らせられる方が迷惑です (  ̄- ̄)』  と、ハッキリ返す。  正直、真昼が常ならぬ様子で家に来た時点で厄介事なのはわかっていた。  そういや前にも真昼は家に逃げてきたなー、と思いながら、 『もう何をどうしたって迷惑をこうむるんですから、サクサク経緯を話してください。なるべく穏便に解決したい』  と、少し強めに返した。あの人にはこう言った方が話が早い。  ーー直後、電話が鳴った。相手は今やり取りしていた本人だ。 「はい、こちら駆け込み寺」 『ーーゴメンね、また迷惑かけて……』  こちらの小粋なジョークにも反応せず、申し訳なさそうに真昼の姉、巴さんがそう言った。
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加