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『おおっと速いっ!五十メートル走七秒前半の速さで道行く人を圧倒しているうっ!!そして散歩中の犬に吠えられたあっ!!それでも速度を落とさないっ!!まるで正門以外視界に入っていないようだっ!!しかし正門は既に閉められているっ!!さあどうする向坂璃子選手っ!!』
無駄にハイテンションな実況を繰り広げ始めた、先程とは別の男の少し高めの声に、ミルクティーブラウンの男はまたもわざとらしいため息をつき、女は顔を顰め、片目を隠した男は少しだけ無表情を崩した。
『向坂選手、一向にスピードを緩める気配を見せないっ!!一体どうするつもりだっ!・・・・・・おっとお!そのまま正門に手を掛けて──飛び越えたあああっ!!向坂選手、一八二センチの正門を飛び越えましたっ!!なんということでアイタッ』
携帯の向こう側からバシン!と思い切りの良い音がしたかと思えば『うるせえよ馬鹿!!』と先程の男の低い怒鳴り声が響いた。
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