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(episode 2.5)
(side:冬吾)
翌日。登校初日。
歩けば歩くほど刺さる視線に、なにかと起こる黄色い?歓声。ここはどこだ?
「…………大丈夫?」
昼食を終えた時点で確実にHPの尽きた俺をおずおずといった感じで由人が覗き込む。
最初は他のクラスメイトも何人か一緒だったけど、気づいたら由人だけになっていた。やっぱりいいやつ。
「……大丈夫じゃない」
「あとSHRだけだからがんばれ。帰り校内案内する?」
「しない。寮帰る。ありがと」
苦笑してる由人にほぼ単語で返答する。
今日一日俺と一緒にいたんだから、由人も絶対疲れてるはずなのに。それでもまだ俺に付き合ってくれようとするなんてどんだけいい人なんだろう。きっと俺なら無理。
「…………天使?」
「は?」
「いや、由人っていいやつだなって思って」
にこりと笑えば少し赤くなる顔。照れてるのかな。照れてるのかも。
「……今日一日でわかったと思うけど!」
「ん?」
「ここではその、なんていうか、そういうのが普通で」
気まずそうに視線を逸らしながら話す由人に、首を傾げながら聞き返す。「そういうの?」
一瞬の沈黙。ため息をつき少し呆れた感じの表情で「少しは察しろよ」って言われた。いやだからそれができないから聞いたんじゃん?
「……男が恋愛対象ってこと」
うんざりした口調の由人に少し意外さを感じながらも、とりあえず伝えられたことを頭の中で繰り返した。
──男が恋愛対象。とは。
「冬吾絶対そういう対象になるから、いろいろ気をつけろよ」
……なるほどなるほど。
「……それって由人もってこと?」
「は?」
「男が恋愛対象なの?」
なんとなくどういう世界なのかは察したから、純粋に気になったことを投げかけてみた。俺は別に友達がどっちでも気にしないけど、知っておいた方が色々と配慮はできるだろうし。
「いや、俺は普通に女の子が好き」
あっさりとそう言われてなんだか拍子抜けした。さっきの態度といい、なんとなく好意を抱かれてる気もしないでもなかったのは、どうやら気のせいだったらしい。
その時に湧いた自分の感情に、少しだけ違和感は覚えたけれど……結局何なのかは掴めなかったから気にしないことにした。
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