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episode17
「なんでこの人がいるんですかぁー」
放課後の校舎。目の前には教科書とノートを開き不貞腐れている様子の冬吾。
「ここは風紀室だからね。居て不思議なのは君の方だけどな本来」
そして隣にはこれまた不機嫌なはじめさん。笑顔が怖い。俺、帰ってもいいかなこれ。
「というか勉強は由人が教えてくれるんじゃなかったの。なんでここで勉強してんの俺。帰ろ由人」
「え? いや、」
「君ね、これ以上どれだけ由人に迷惑かければ気が済むの? 由人が教えるより俺が教えた方が効率良いから由人のために 仕 方 な く 時間割いてあげてるんだから感謝こそすれどその態度は改めた方が良いんじゃないの」
「誰も頼んでないしなー」
「はァ????????」
勉強そっちのけでバチバチしだした二人を何とか宥めて、本来の目的であった試験勉強に取り掛かる。なにこれめっちゃ疲れる。なんでこんなに仲悪くなってんのこの二人。
結局、冬吾は生徒会入りの話を受けると決めたらしい。俺に勉強を教わる気も満々で、観念して二人で生徒会に返事をしに行った翌日にはスマホが鳴った。会長から話を聞きつけたはじめからの連絡だった。会長と仲良くはないとか言ってたけど、本当は仲良いんじゃないかなあの二人。情報回るの早すぎだろ。
それから小一時間お説教が続いて、結局妥協案としてはじめと一緒に冬吾の勉強を見ることで話が落ち着いた。俺自身も試験勉強しなきゃだから正直ありがたいかもと少し思ってたけど、想定外に大変かもしれないこれ。
「由人もわからないところあったら聞いてね」
「……はーい」
くしゃ、と頭を撫でられるのを普通に受け入れてたら、目の前の冬吾がジト目で「距離近すぎない?」と聞いてきた。……距離、とは。
「生まれた時から幼馴染だからね。普通だよ」
はじめがさらっとそう返して、おそらく風紀の仕事の資料に目を通し出す。はじめ自身は試験勉強しなくても大丈夫なんだろうか。あ、もともと普段の授業だけで勉強できるタイプだったか羨ましい。
「生まれた時から?」
「ん? あぁ、家族同士がもともと仲良くて」
「ふーん」
「というか冬吾、真面目に勉強する」
「……してまーす」
それからは冬吾も真面目に試験勉強に取り組んで、はじめともそれなりにコミュニケーションが取れていた。はじめ、勉強教えるのめちゃくちゃ上手いから、俺が教えるよりも本当に効率は良かったと思う。
……試験、うまくいくといいな。
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