episode,0.4649 初めの一歩

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episode,0.4649 初めの一歩

外は明るく、日の光が僅かに部屋の中に差し込む。劇場のスポットライトは、薄暗い舞台の中に白い布を被る何かを静かに映し出した。 何かは、後ろから照らしてくる日の光に気づくと眩しさのあまり、手でそれを遮った。 何かの手は赤く血みどろで、床には赤い絨毯が敷かれ、腕を引きちぎられた人形が2体横たわっていた。内臓が引きずり出され、噛み切られた頬が絨毯に散乱していた。赤い絨毯は、人形から出る液体を原動力に床へと広がり続け、ガタガタと震える若々しい足に柔らかくぶつかった。 壁に寄りかかってただただガタガタと震えている。目の前の光景を受け止めきれず、涙が赤い絨毯をほんの僅かだけ浄化していっていた。 「ゥ………」 白い布は、立ち上がって泣きながら唸る少女に歩いて近づいた。右手には、形の変な刃物を持っていて赤く新鮮な血がべっとりと湖縁ついているが、先端から滴り落ち静かに赤い絨毯に同化していった。 少女は、慌てて座ったまま後ろに下がろうと目を大きく見開いて周囲を見渡す。目の前まで白い布が迫り、窓から僅かに差し込んでいた光は、白い布に遮られてしまった。 目の前まで来た白い布は、更に刃物を目の真ん前に突き立て、少女は、怯えながら突き立てられた刃物を凝視した。 少女の心臓の鼓動は胸に触れなくとも分かるほどに高まる。息をするので精一杯で、刃物を目の真ん前に突き立てられ今から殺される、という現実を想像すると恐怖は一段と高まった。惨殺された親を見ることもなく、見知らぬ奴に殺されて死ぬのだ。 「コロ…サナイ…デ…」 死ぬ前に見知らぬ白い布に今出せる精一杯の声で命乞いをした。精一杯でも声は掠れてしまい、聞こえるかどうか不安なところだが。 それを気にすることなく、刃物を目に押し込んだ。 エラート半島の二つの国家が小競り合いで争う中、南のエラート共和国にて、3年前から立て続けに食人事件が起きていた。その食人事件には、全てに共通がある。 「白い布が死体に被せられている。」 「白い布が襲ってきた。」 [[rb:子供 > 誰も]]がそう証言した。 そしてもう一つ。 惨殺されたのは全て大人で、その子供には掠り傷もつくことはなかった。 しかし、大体の子供は、8日後に失踪や自殺未遂を起こし、そして9日後には、大量の血を吐いたり、大動脈破裂などで死亡するのだ。 警官と、それを知ったマスコミ達は、新聞やラジオを通して大々的に報道。 それを好機と見た共和国軍と政府は、この食人事件を隣国、北エラートの性だとしてその報道に便乗した。 共和国の人々は、北エラートに不満を高まらせると共に、殺人鬼に恐れた。 「[[rb:白布 > はくふ]]」 そう呼んだ。
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