初恋

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「なに人の席に座ってんのよ、邪魔。さっさとどいてよバカ」 「バカとかいってんじゃねーよ、ブス」 もう天敵としか言いようがないと思う。中2でクラス替えがあって、新しい出会いへの期待に胸膨らませて足を踏み入れた教室で、いきなり私の席に座って近くに座ってた男子と騒いでたのが中島だった。何かと目立つ奴だから知ってはいたけど想像通り最初から印象は最悪で、それ以来顔を合わせるたびに口ゲンカの毎日。小学生のガキ大将がそのまま大きくなったようなヤツだよね、と友達のミカにいったら『アンタもね』と返された。 そんな中島の印象が少しずつ変わってきたのはテニス部の練習試合を見たときから。 去年も全国大会に出場した強豪の男子テニス部。そんな中で中島は2年でただ1人レギュラーに選ばれていた。それも3年生を相手にシングルスで6-1と圧倒的な強さで勝利して、テニスには関係ない女の子たちからも注目を浴びていた。 「あれ、佐藤じゃん。なんだかんだいって俺の活躍を見に来たんだろ」 「冗談、私は金子先輩を見に来たんです。中島を見に来るほどヒマじゃないよ」 「ンだと、さっきの俺の試合見てなかったのかよ」 「見てたけど、金子先輩のほうが100倍カッコいいし」 「なんだとコラ」 ここで『何をしている』といって怖いキャプテンが中島の耳をつかんで引っ張っていかなかったらまたいつものようにヒートアップするところだった。ホントは『すごいじゃん』の一言くらいいってみたいところなんだけど、中島の顔 を見ると出かかってた誉め言葉をなぜか飲み込んでしまうんだ。
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