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「ところで佐藤、どうする?これから」
「これからって?」
「このままいつ止むかわかんねえけどとりあえず雨があがるのを黙って待つ、それとも」
「それとも?」
「覚悟決めて駅まで走る。俺は走るぜ」
中島は私がどっちを選ぶのか待っている。いつ止むかわからない雨を待つよりも、ここでたった一人残されるくらいなら多少雨に濡れてもここから脱出したほうがましだ。私は頷いた。
「私も行く」
「オッケ、じゃあ行くぞ」
中島は制服のジャケットを脱ぐと私の頭にバサっとかぶせ、私のカバンを手に取った。え、と中島の顔を見上げると同時に中島は私の肩を抱いて雨の中へと飛び出した。
「足元に泥が跳ねるけど我慢しろよ」
私のスピードよりも少しだけ早めに走るから、私の肩を抱く中島の腕には自然と力が入る。いつもなら10分くらいの駅までの道のり。走ってるから10分もかかってないはずなのにやけに長く感じた。
おかしい。
中島がやけに男っぽく見えるのはなんでだろう。
私の肩を抱く腕もいつのまにこんなにたくましくなっていたの?
何よりも、中島が女の子に優しくできる男の子だということに気付いてしまった。
どうしよう。
私、顔を上げられない。
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