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第一話 勇気の花
◆Once upon a time◆
あるむらにナイトがいました。
かれには勇気がありませんでした。
いつも下をむいているのです。
だから、ナイトはむらびとたちにバカにされていました。
このままじゃ、つよくはなれないと。
そんなナイトのところにコトハナのネコがやってきました。
「キミはなにをこわがっているの?」
「おれはよわいから、ばけものが、こわい」
「ほんとうに、それがこわいもの?」
ナイトはネコのいっていることが、よくわかりませんでした。
それいがいにこわいことがあるのでしょうか?
「ねえ、ナイトさん、キミはなにをまもっているの?」
はて? ネコはなにをいっているのでしょうか?
ナイトはまもるためにいます。なにをまもるのかなんて、どうしてそんなあたりまえなことをきくのだろう。
「…………」
だけど、ナイトはうまくいえませんでした。
けっきょく、じぶんでもよくわかってないからです。
「じゃあ、キミにこのコトバのタネをあげよう。まもっているのがなにかわかったら、こえにだしていってみて。きっとステキなコトハナをさかせるよ」
そういってネコはナイトにタネをあげました。
「おれはなにをまもっているんだろう……?」
いつも下をむいているナイトはさらに下をむくようになりました。
「さあ、それはキミにしか分からないことだろう?」
ネコはとなりにいてくれますが、なにもおしえてくれません。
そんなある日、むらにとてもとてもおそろしいかいぶつがあらわれました。
かいぶつはむらのなかであばれています。
「キミはたおしにいかないの?」
「だっておれはよわいから、たおすことができない。いみがないんだよ」
ナイトはかげにかくれてなにもしません。
なにもしないからかいぶつは、ものをこわして、たからものをぬすんでやりたいほうだい。
「だめ、だ」
だけど、とつぜん、ナイトはたちあがったのです。
「なにがだめなの?」
「かいぶつがおそっている」
ナイトがみているさき、まさにかいぶつがむらびとたちをたべようとしているのです。
「キミはよわいから、たおせないんでしょ? いみがないんでしょ?」
「それでも、だめだ。だってあそこには、おれのかぞくがいる」
ナイトはネコからもらったコトバのタネをにぎりしめます。
「おれのたいせつなひとが、まもりたいひとが、いる……!」
大きなこえで、せいいっぱい、ナイトはまもりたいものをさけびます。
すると、どうでしょう。
ナイトの手からうすむらさきの小さなタイムの花がどんどんさいて、ひろがっていきます。
きづけば、むらいちめんに花がさいていました。
かいぶつもからだに花がまきついて、うごくことができません。
それから、花をおそれたかいぶつは、むらをおそわなくなりました。
ナイトはたいせつなひとをまもったのです。
ナイトは花をさかせたのです。
「おめでとう。ステキなタイムの花だね。キミはコトハナを、勇気の花をさかせたんだよ」
ネコはうれしそうにわらって、そして、ナイトにサヨナラを言います。
「それじゃあ、ボクたちはたびにでるね」
ネコはまたコトハナをひつようとしているひとのところへ、たびにいってしまいました。
小さな花がたくさんあるむらにナイトがいました。
かれは勇気のあるこころのやさしいしょうねんです。
きょうもかれはかおを上げて、たいせつなひとがいるこのむらをまもっています。
これはタイムのむらの、あるしょうねんの勇気のおはなし。
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