FACT 01

11/22
前へ
/62ページ
次へ
   ***  ふう、今日も頑張りました。  パンケーキ──おっと大事なことを忘れるところでした、いちごが載った(ここ重要)のパンケーキに向かって、足取りも軽く街を歩いていく。  まだ風は冷たいけれど、寒いというほどではない。歩道には、コートを着ている人と上着だけの人が半々だ。確実に、春がやって来ている。  夕方、企画書の修正案を丸井先輩と高倉課長に確認してもらい、おおまかなOKをもらった。お役所様への企画提案書の提出締め切りまで、あと四日。まあ、どうにか間に合うでしょう。  予算を削る努力をしなくていいという夢のようなお墨付きをもらったので、デザイナーの白石さんと相談して、提案内容をワンランクアップすることにした。  展示会に出展するブースのデザインを最初のプランより高さがあるものに変え、現地で配る販促物のラインナップも変更する。グッズに、会場内を被って歩ける厚紙製の帽子も追加した。ちなみに、帽子の形は、県のキャラクターのぶぶたんだ。  現地スタッフのレベルも上げた。ビジネスの交渉にも対応可能なスタッフを二人追加して、商談のための別室も確保。オプションで、インバウンド促進を狙った旅行会社とのタイアップ企画もつけてみた。  いやー、我ながらばっちり。秀逸な企画です。そして、ケチケチしなくていいというのは、心にも余裕が生まれて、いい気分です。 「いちごー、いちごのパンケーキー♪ バニラアイスもつけたら完璧♪」  心の中で、ふんふんと鼻歌を歌いながら歩いていたら、嫌なことを思い出した。  前から知ってはいたけれど、高倉課長は結構失礼だ。プレゼン資料の案を見せたら「お前、意外とセンスいいよなあ」って、どういう意味なんですかね? 自分だってクマみたいなくせに。そして、一緒にうなずく丸井先輩、ひどくないですか?  まあ、いいや。今日はいちごのパンケーキです。たっぷりの生クリームといちご。女の子の夢のスイーツだ。ちょっと贅沢をして、バニラアイスも載せてしまおう。  Land’s Endの扉を開けたところで、春菜は凍りついた。目の前に信じられない光景があった。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1277人が本棚に入れています
本棚に追加