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「ん──」
すべすべしたシーツとふんわりした毛布の感触が気持ちいい。でも、ちょっと肌寒い。
春菜は、無意識のまま毛布の端をつかみ、肩までぐいっと引っ張り上げた。それから、くるんと丸くなり、そばにある温もりにくっついた。
──はー、あったか。
ぬくぬくとした心地よさに、また、とろとろと眠りに落ちて──いこうとしたところで、とてつもない違和感を感じた。
──?
すうっと目が覚めた。春菜は、ぱたんと仰向けになって、うっすらと目を開けた。
陽光が射し込む、明るい部屋。白い天井。シーリングライト。茶色い木製のカーテンレール。どれにも見覚えがない。
──?
ぽやんとした頭で考えていると、隣で何かが動いた。
何かって、何だっけ。ずっとくっついていた、この温もりは──?
その正体に思い当たった途端に、ばくばくしてきた。隣を見ないように、仰向けになったまま、そろそろと手足を動かして横に移動する。
「落ちないでね」
聞き覚えのある声が、すぐそばで言った。
「ぎゃ」
起きていましたか。
「ぎゃって、それはないでしょう」
毛布の端っこを握り締めたまま、どきどきしながら目だけを横に動かして、声の方を見た。考えていたとおりの人と目が合った。
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