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「えーっと、あの」
トッピングまでばっちり決めていたというのに、相手のオーダーを知ってしまった今となっては、自分のオーダーを口にするのに勇気がいる。
「こいつ、真似したな」と思われるのも屈辱だし。でも、会社にいる時から飲もうと決めていたものを、こんなことで諦める選択肢は、はっきり言ってない。
ビジネスパーソンな人がこちらをうかがっているんじゃないかという気がして、春菜はちらっと相手に目を遣った。
男性は、整った横顔を見せている。多分、こっちには全く注意を払っていない。
──よし。
春菜は心の中で気合いを入れ、思い切って、今日の本題を口にした。
「あの、ホットチョコレートをお願いします。マシュマロ、五個で──」
小声で告げると、隣の隣の隣の隣の席で、男性が軽く笑ったような気がした。
でも、さすがにそんなことはないだろうから、いわゆる被害妄想というやつに違いない。
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