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「──っていうことがあったんですよ」
週明けの月曜日。自分のデスクでお弁当を食べながら、二つ年上のお姉様、丸井先輩に話していたら、後ろから「ぶくくく」という笑いが聞こえた。ばっと振り向くと、課長が立っていた。
「何ですか?」
春菜は高倉課長をぎろっと見た。
数多くの顧客を持ち、会社に億単位の貢献をしている高倉課長、我が営業部のトップであらせられる課長様のことは、ちゃんと尊敬している。
でも、それとこれとは別だ。部下の辛い体験を笑うのはやめていただきたい。
「いや、別に?」
セリフのあとにクエスチョンマークがついていたような気がするが、気のせいだろうか。
「ホットチョコレートねえ」
ふうん、と言った高倉課長に向かって、春菜はぶちぶちと言い募った。
「悔しいじゃないですか。ずっと飲もうと思っていたからオーダーしたのに、まるで、わたしの方が真似っこしたみたいになっちゃったんですよ。しかも、マシュマロ五個って、何でカスタマイズまで一緒なんですか」
高倉課長が笑う。
「いやー、小鳥遊、いいよなあ、お前」
「何がですか」
春菜は低い声で言った。明らかに面白がられている。
「今日も行くの?」と丸井先輩に尋ねられた。
「行きますよ。今日はパンケーキを食べます。イチゴが載ったやつ。ホットチョコレートのリベンジです」
高倉課長が、今度は声を上げて笑った。失礼な。
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