FACT 01

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   *** 「──っていうことがあったんですよ」  週明けの月曜日。自分のデスクでお弁当を食べながら、二つ年上のお姉様、丸井先輩に話していたら、後ろから「ぶくくく」という笑いが聞こえた。ばっと振り向くと、課長が立っていた。 「何ですか?」  春菜は高倉課長をぎろっと見た。  数多くの顧客を持ち、会社に億単位の貢献をしている高倉課長、我が営業部のトップであらせられる課長様のことは、ちゃんと尊敬している。  でも、それとこれとは別だ。部下の辛い体験を笑うのはやめていただきたい。 「いや、別に?」  セリフのあとにクエスチョンマークがついていたような気がするが、気のせいだろうか。 「ホットチョコレートねえ」  ふうん、と言った高倉課長に向かって、春菜はぶちぶちと言い募った。 「悔しいじゃないですか。ずっと飲もうと思っていたからオーダーしたのに、まるで、わたしの方が真似っこしたみたいになっちゃったんですよ。しかも、マシュマロ五個って、何でカスタマイズまで一緒なんですか」  高倉課長が笑う。 「いやー、小鳥遊(たかなし)、いいよなあ、お前」 「何がですか」  春菜は低い声で言った。明らかに面白がられている。 「今日も行くの?」と丸井先輩に尋ねられた。 「行きますよ。今日はパンケーキを食べます。イチゴが載ったやつ。ホットチョコレートのリベンジです」  高倉課長が、今度は声を上げて笑った。失礼な。
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