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「ねえ、聞いた? 井波先生が休んでいる理由」 「風邪じゃないの?」 「野犬に襲われたんだって」 「えー!? こんな都会のど真ん中で?」 「野良じゃないのよ。ゴミ屋敷で飼われていたのが、逃げ出したらしいよ」 「そういえば、二駅先にゴミ屋敷があるって聞いたことある」 「取り壊すときに、逃げ出したんだって。あ、今は保健所にいるみたい」 「そんなに遠くから、どうやってここまで来たんだろうね?」 「浅海さんが言うにはさ、ほら、給食の残りの匂いを嗅ぎつけたんじゃないかって」 「ああ。お腹が空いて、こっちに来ちゃったんだ」 「それがさあ、変な話もあるんだよね」 「変な話って、浅海さんが呪ったとか?」 「違う違う。井波先生を襲った犬がさ、白い腕に連れられてたって話」 「こわー。……そういえば、プールにも出るらしいじゃん。白い腕の幽霊」 「溺れた子もいるってね」 「浅海さんといえばさ、同じクラスの八瀬さん、最近見ないよね」 「なんか、睡眠障害になっちゃったんだって」 「なんで?」 「毎晩毎晩、白い腕に首絞められる夢を見るんだって。でも、病院で検査しても、そんなものが巻き付いてる様子はないんだって」 7/7 アサミ  久し振りに書けて、嬉しいです。  また日記が取られる危険性があるので、野犬襲撃事件の事は、直接会って詳しく説明しますね。多分、2人が思っている通り、あれもリューゲルのおかげよ。  あの子ったら、人間以外の言葉も覚えたみたい。本当に賢くて、不思議な生き物ですよね。どこから来たのかは、結局、まだ分からないままだけど……  もうすぐ夏休みになるから、学校に来られなくなりますね。  だから、一週間ごとに、それぞれの家で過ごさせるのはどうでしょうか? そうしたら、マユちゃんやミキちゃんとも最低週1回は会えるし、リューゲルにも、いろんなものを見せてあげられると思うの。  リューゲルは本当に不思議な生き物ですね。  出会った頃は小さかったのに、今では自由に大きさを変えられるようになっています。この間は入道雲くらいにまで膨らんでくれました。  これからどんな風に成長するのか、とても楽しみです。  リューゲルと一緒なら、素敵な夏休みが過ごせるでしょうね。
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