1人が本棚に入れています
本棚に追加
終
「ねえ、聞いた? 井波先生が休んでいる理由」
「風邪じゃないの?」
「野犬に襲われたんだって」
「えー!? こんな都会のど真ん中で?」
「野良じゃないのよ。ゴミ屋敷で飼われていたのが、逃げ出したらしいよ」
「そういえば、二駅先にゴミ屋敷があるって聞いたことある」
「取り壊すときに、逃げ出したんだって。あ、今は保健所にいるみたい」
「そんなに遠くから、どうやってここまで来たんだろうね?」
「浅海さんが言うにはさ、ほら、給食の残りの匂いを嗅ぎつけたんじゃないかって」
「ああ。お腹が空いて、こっちに来ちゃったんだ」
「それがさあ、変な話もあるんだよね」
「変な話って、浅海さんが呪ったとか?」
「違う違う。井波先生を襲った犬がさ、白い腕に連れられてたって話」
「こわー。……そういえば、プールにも出るらしいじゃん。白い腕の幽霊」
「溺れた子もいるってね」
「浅海さんといえばさ、同じクラスの八瀬さん、最近見ないよね」
「なんか、睡眠障害になっちゃったんだって」
「なんで?」
「毎晩毎晩、白い腕に首絞められる夢を見るんだって。でも、病院で検査しても、そんなものが巻き付いてる様子はないんだって」
7/7 アサミ
久し振りに書けて、嬉しいです。
また日記が取られる危険性があるので、野犬襲撃事件の事は、直接会って詳しく説明しますね。多分、2人が思っている通り、あれもリューゲルのおかげよ。
あの子ったら、人間以外の言葉も覚えたみたい。本当に賢くて、不思議な生き物ですよね。どこから来たのかは、結局、まだ分からないままだけど……
もうすぐ夏休みになるから、学校に来られなくなりますね。
だから、一週間ごとに、それぞれの家で過ごさせるのはどうでしょうか? そうしたら、マユちゃんやミキちゃんとも最低週1回は会えるし、リューゲルにも、いろんなものを見せてあげられると思うの。
リューゲルは本当に不思議な生き物ですね。
出会った頃は小さかったのに、今では自由に大きさを変えられるようになっています。この間は入道雲くらいにまで膨らんでくれました。
これからどんな風に成長するのか、とても楽しみです。
リューゲルと一緒なら、素敵な夏休みが過ごせるでしょうね。
最初のコメントを投稿しよう!