七日間

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七日間

 あれから一週間が経った。  あの日以来、自宅のテレビはつけっぱなしになっている。ここ数年は、テレビの前に座ってきちんと番組を見る、などということはほぼしなくなっていたので、こんなにパソコンでもスマートフォンでもない大きな画面をしっかり眺めるのは久しぶりだ。やたらクリアな映像と、やたら響きの良い音声は、目よりも脳の疲れをダイレクトに増す気がする。  そうやって得た情報はあまりにも嘘くさく、でも「それは事実だ」と画面の中の声もネットの上の書き込みも叫び続けていて、この狭いワンルームの中のわたしのリアルな声は、あの日からずっと行き場をなくしたままだ。  あの日、福岡以外に住んでいる友人や親族とのやりとりが飛び交ったトークアプリの通知音も、この七日間ですっかりなりをひそめた。あれ以来電源に挿しっぱなしのスマートフォンは、なつみからの既読マークを待ち続けて、待ち続けて、待ち続けて。  テレビから、CMが流れてくる。その音で、ああ、今ついているチャンネルは民放なのか、と思う。ことさらにさわやかな清涼飲料水のペットボトルを手に、美少女が笑っている。それはまるで、かの東日本一帯を襲った震災の時のように、公共広告機構の映像に差し変わるほどの事態では今回はないのですよ、と言われているような気がして、のろのろとリモコンを手に取り、公共放送へとチャンネルを切り替える。  ガラスのようなドーム状の巨大な物体に、すっぽりと覆われた福岡の街が映っている。  いや、本当にそれは福岡の街なのだろうか。  中継地として画面の右上に表示された地名も、そこでリポートをするアナウンサーの背後に写り込む電柱に記された市名も、間違いなくその「覆われた」とされる街と隣接するところのものだ。でも。  そのドームの中に見えるのは、  火のように見えるもの、だけなのだ。  そもそも。あの中は、燃えているのか? 本当に?  この映像から真っ先に考えられる現状の説明として、テレビの向こうから視聴者に伝えられた情報はこうだ。  ——一週間前、突然の爆発のような衝撃と共に、福岡市街に大規模火災が発生、それと同時に、正体不明の透明のドーム状の巨大な物体が出現、火災もろとも、大濠公園を中心として福岡市中央区ほぼ全域及び近隣の早良区、城南区、南区、博多区の一部を覆い尽くした。結果、その謎のドームの中で、福岡の街は今も燃え続けている。そして火災の直接的な原因も不明のまま。
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