惜別

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       *  あれは、まだ若かりし頃。  新規開拓したベンチャービジネスが当たった。  仕事はオレにとってゲームそのものだった。  斬新なアイデアが面白いように浮かび、生み出される企画はひとつ残らずヒットし、事業は拡大の一途だった。  妻子がありながら、次々と愛人を乗り換えるのも、ゲームの一つに過ぎなかった。  何もかもが順風満帆、怖いものなし。  全てがオレの思い通りだ。  世間も時代の寵児だ、ニューリーダー登場だと持て囃した。  人を人とは思わず蹴落とすゲームに嵌り、盲目な裸の王様そのものだった。  そんな絶頂の最中、突然、それまで全てを黙認していた妻真理から離婚を切り出された。  もう、耐えられないと。  家庭を一切顧みていなかったので当然だ。  驚きも悲しみもなく、むしろ家庭という縛りから解き放たれ、気が楽になった。  せいせいした程だ。  息子の麗矢の存在だけが唯一心残りではあったが、それすらすぐに忘れた。  欲にまみれ、どっぷり浸かり、はまり込み、いつしか抜け出せなくなっていた。  だが。
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