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「いや、まだ大丈夫っす。じつはね……俺、こうしてみんなと一緒にゲームするのも今日で最後なんすよ」
「うそっ、なんで?」
「来月結婚するんで」
「えぇっ、結婚?!」
みんなはリンダの言葉に驚き一斉に顔を上げて、申し合わせたように同じ台詞を口走った。
ゲーム機から次々と敵の攻撃を受ける爆破音が流れ、みんなは慌てて視線を画面に戻す。
リンダは敵の攻撃で傷付いた仲間に治癒魔法をかけて体力を回復させながら話を続ける。
「彼女はひとつ歳下の看護師でね、これまでは金曜の夜はほぼ毎週彼女が夜勤だったからここにも来られたんすけど、結婚後は将来子どもができたときのことも考えて夜勤はしたくないって、今月いっぱいで今の病院を辞めて、結婚式と新婚旅行が済んだら日勤だけの病院に転職することになってるんすよ」
「ほおぉ……それはなんとも堅実な……」
元々はバーの常連だったことで知り合ったリンダは、たしか私よりふたつほど歳下だったと記憶しているから、それよりひとつ歳下の彼女は24歳ってとこだろうか。
まだ若いのに結婚とか子どもとか、将来のことをちゃんと考えているんだなと感心する。
それにひきかえ今の私は、画面の中にのさばる巨大な敵を倒すことで精一杯だ。
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