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タクシーの後部座席に二人並んで座り、動き出した窓の外の景色を眺めていると、リンダの寂しそうな顔を思い出した。
「リンダ、結婚するんだねぇ。まだ若いのに」
「そうだな。まぁ、本人たちが良ければそれでいいんじゃないか」
「でもリンダは私らよりふたつ歳下だよ?尚史はこれまでに結婚とか将来のことなんか考えたことある?」
「ないな。結婚以前に付き合うのも面倒だし」
「だよねぇ。私もない」
この男は背も顔面偏差値も高いのに、そもそも恋愛というものにはあまり興味がないらしい。
漫画の中ならおそらくモテキャラだと思う。
それなのに好き好きアピールをしてくるかわいい女の子には目もくれず、ひたすらゲームばかりしているのはもったいないような気がしなくもない。
かつては“好きだから付き合って”と言われて断りきれず何人かの女の子と付き合ったりもしたようだけど、超絶マイペースなこいつがまったく相手に合わせようとしないので、誰とも長続きはしなかったそうだ。
付き合うのが面倒なんていう尚史は『草食系』を通り越して『絶食系』だと思う。
かく言う私も、学生時代は周りのみんなから置いてけぼりを食らうのを恐れ、友人の紹介で知り合った人と付き合ってみたことが何度かあった。
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