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いつもより道のりを遠く感じながらようやく病院に着き、逸る気持ちを抑えて病室のドアを開けると、傍らには伯母が付き添い、光子おばあちゃんはベッドに横たわって静かに目を閉じていた。
まさかもう……いや、眠っているだけだよね?
「光子おばあちゃん……?」
私がおそるおそる声をかけると、光子おばあちゃんはゆっくりとまぶたを開き、やわらかく微笑んだ。
「あれ、モモちゃん。お見舞いに来てくれたの?おばあちゃん寝てたかね?」
「ごめん、起こしちゃったね」
いつも通り優しい光子おばあちゃんの笑顔にホッとしつつ、ベッドのそばに椅子を置いて座る。
「光子おばあちゃん、なかなかお見舞いに来られなくてごめんね。具合はどう?」
私が手を握りながら尋ねると、光子おばあちゃんは以前より弱々しい力で私の手を握り返した。
「相変わらずだけどねぇ、今日は少しいいみたいだよぉ。モモちゃんが来てくれたから、いっぺんに元気になれそうだ」
「ホント?良かったぁ。だったらこれからはもっと会いに来るね」
私がそう言うと、光子おばあちゃんは私の手をポンポンと叩いた。
「嬉しいねぇ。でも無理しなくていいんだよ。モモちゃんはお仕事と結婚式の準備で忙しいんだろ?」
「……えっ?」
その言葉に驚いて顔を上げると、伯母は声には出さず口の動きだけで「話を合わせてあげて」と言った。
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