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「うん……まあまあ忙しいけどね、大丈夫だから」
「美穂ちゃんの花嫁姿は見られたし、赤ちゃんも抱かせてもらったからね。昨日も家族そろって来てくれたんだよ。次はモモちゃんの花嫁姿だ、楽しみだねぇ」
伯父の娘の美穂ちゃんは私より3つ歳下で、早くに結婚して子供を産んだ。
今は旦那さんの仕事の都合で九州に住んでいるので、なかなかこちらには帰って来られないようだし、お盆休みやお正月でもないのに、美穂ちゃんが家族でこちらに帰って来ているとは考えにくい。
「じゃあモモちゃんの結婚式に出席できるように、早く元気にならなきゃね」
伯母さんは当たり前のようにそう言ったけれど、私には結婚の予定どころか、その相手すらいない。
そんなことは伯母さんもわかっているはずなのに、否定しなかったということは、もしかして光子おばあちゃんは……。
その悪い予感は的中した。
しばらくして光子おばあちゃんが眠ったあと、伯母さんは家族ルームに私たちを連れて行き、光子おばあちゃんの病状と、認知症の症状が出ていることを話してくれた。
もしかしたら光子おばあちゃんは、私たちのことも誰だかわからなくなってしまうのかなと思うと怖かった。
そして何より、体の中に潜む病魔がいつ光子おばあちゃんをこの世から連れ去ってしまうかも知れないという恐怖に駆られた。
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