薄紅の恋

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「時々、困った客が来ることもあるんだ。さっきみたいなこともある」 そうだよね…… いろんな人がいるんだもの。時には大変なお客様もいる。 「……だけど辞めるなんて言わないで欲しい。真由さんも俺も、美羽ちゃんが来てくれてとても助かってるから。本当によくやってくれて感謝してる」 「辞めるだなんて。わたし、真由さんと明さんがいるお店大好きなんです!」 アルバイトが真由さんと明さんのお店で良かったって心から思ってる。 他のお店でバイトしたなら怖い目にあえばすぐに辞めるって泣き出していたかもしれない。 「そう言ってくれて、良かった。真由さんも怖い目に遭わせたって気にしてたから」 それは真由さんたちのせいじゃないのに… そんな優しくて温かい気遣いがとっても嬉しくなる。 「これ、俺が作ったんだけど。よかったらもらって」 駅まで来ると明さんは小さな紙袋を差し出した。 中を覗くとチョコチップが入ったカップケーキが4つ。 「わあ。ありがとう、明さん」 「じゃ、明日も、また」 駅で別れて、動き出した電車の中で今日の出来事を思い出してた。 アルバイトをはじめて一週間。 心から真由さんと明さんのいる空間にもっといられたなって思った。 夏休みの間だけじゃなくて、ずっと続けられたならいいのに…… そう思った───
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