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それから十日ほどが過ぎて、ますますアルバイトが楽しくなっていった。
カフェで話すお客様たちとも仲良くなって真由さん、明さんとみんなで他愛のない話で笑いあう。
そんなある日。
テーブル席に一通の手紙が置かれてあるのに気づいた。
誰かの忘れ物かな?
この席に座ってた人は、えーと。
近くの大学の学生さんだったかな?
席に座ってた人を思い浮かべる。
いつも本を読んでて物静かな男の人だった。
封筒を手に取ると、宛名にはわたしの名前が書いてあった。
わたしに?
勝手に開いていいものじゃないような気がして封を開けていいのか戸惑う。
悩んでいると、明くんが後ろからひょいと顔を出した。
「手紙……?」
「これ、なんかわたし宛みたいで」
明さんもこの席に座ってた学生に思い当たったみたいで、少し思案顔になった。
「確か近くの大学の、最近よく顔を出すようになった学生、かな?」
「どうしたらいい?わたしが読んでもいいものなのかわからなくて…」
アルバイトを始めて3週間。
初めてのことだった。
単なる忘れ物なら、彼が来た時に渡せばいいのだけど、わざと置いて行ったなら読んで欲しいと、そういうことなんだろう。
「読んでみたら?この手紙、美羽ちゃん宛だから」
答えをあっさりとくれたのは真由さんだった。
開いて見ると、わたしを美化に美化した恥ずかしく顔が真っ赤になるような、そんなすごいラブレターだった───
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