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ポタッ
ポタポタッ
わたしの目の前に庇うように片腕を広げた明さんの足元に、赤い血が!
「明さん!!!」
「美羽ちゃん、下がってて」
「でも!」
「いいから」
明さんの前に出ようとしてそれは遮られた。
明さんの前に真っ青になって両手でナイフを握りしめブルブル震えてる。
「僕は、美羽ちゃんがただ…好きで……誰にも渡したく…なくて」
え……?そんな。
そんな身勝手なこと、信じられなかった。
明さんのシャツの腕のあたりが赤く染まってく。
それでもわたしの前から退かなかった。
「自分だけのものにしたい。本当にそれでいいのか?美羽ちゃんにこんな表情させて本当にそれで満足か?」
明さんの言葉に涙目になって首を横に振った。
「違う……ただ僕は美羽ちゃんが笑って話しかけてくれたのが嬉しくて」
「だったら、美羽ちゃんを困らせるな。それをここに置いていけ。今なら誰も見てない。騒ぎにもなってない。美羽ちゃんにも何もなかった」
「でも」
「いつも店に来てくれてた君のこと見てたよ。一生懸命に勉強してた。コーヒーが美味しいと喜んでくれてた。落ち着いたらでいい……また店に来てくれれば。だから」
明さんは小さく、またきてほしいと言った。
「もう誰も傷つけないって約束してほしい」
涙目の学生さんはぐっとくちびるを噛むと頷いた。
「さあ、誰かが通る前に、早く」
戸惑いながら光るモノを置くと、ゴメンと振り返り言って去っていった。
「明さん、ケガの手当て……っ!?」
「美羽ちゃん」
明さんが手足の震えが治まらないわたしに向き直ると、優しくその腕に包み込んだ。
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