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「病院はダメだ。いろいろ聞かれたら困る。後で店に戻ってから治療するから大丈夫」
ハッとした。
そうだ。病院は……
でも、もし化膿したら。
どうしよう、こんな時、パパだったら……
どうしようかと考えて、ふと、家族ぐるみでお世話になってるお医者さんを思い出した。
成田医院の先生。
パパや奏さんたちみんなが信頼を寄せてる……
「あの、明さん、わたしについてきてくれますか?」
「いいよ、わかった」
明さんは何も聞かないでわたしと一緒に歩いてくれた。
成田医院はすぐ近くで、
裏口から入ると、無精髭を生やした成田先生が呑気にタバコを咥えて立っていた。
ひとめみて、何かあったなとさりげなく別室へと明さんとわたしを通してくれた。
「で、……これなわけか」
明さんを治療する間、成田先生は黙ってわたしの話を聞いてくれていた。
「その常連のお客様、明さんと話してちゃんとわかってくれたの。警察沙汰にしたくなかったのはわたしの方なの」
「美羽ちゃんは何も悪くないです。これは俺が勝手にしたことで」
成田先生は化膿止めの注射をして飲み薬もくれた。
ため息は大きかったけれど、
「榊にはちゃんと自分達から言え。俺から言えるのはそれだけだ」
それ以上は何も言わなかった。
成田先生はやっぱりスゴいひと。
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