薄紅の恋

4/21

133人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
真由さんの言葉に顔を上げると、優しい洋楽が低く流れる店内の奥から、白いシャツにネイビーのエプロン姿の青年が歩いてきた。 手に持ったトレイの上にはティーカップがふたつ。 「わたしの甥の明よ。少し前から店を手伝ってもらってるの。美羽ちゃんと一緒に仕事するから仲良くしてね」 真由さんの……甥? 青年はティーカップをわたしの前に置くと、すこし不器用そうに頭を下げた。 「月野 明です。…よろしく」 「はじめまして、わたし、皇 美羽です。これからお世話になります。よろしくお願いします」 自己紹介と挨拶すると、明さんは大学二年生で、わたしよりふたつ年上だと聞いた。 「美羽ちゃん、わからないことがあったら遠慮なくわたしや明に聞いてね」 真由さんは一通り店の中を案内して、接客について教えてくれた。 「ここは癒しのお店なの。お客様がのんびりゆったりと寛げるようにお手伝いしてあげてね。笑顔でお帰りいただければ嬉しいわね」 奥にはテーブル席。手前はカウンターがあって、お客様はそれぞれの場所で思い思いに本を読んだり、明さんと話ししたりしていた。 雰囲気が柔らかくて居心地がとてもいい。 わたしも知らず知らずのうちにニコニコしていた。 「美羽ちゃん、その笑顔でよろしくね」 こうして、真由さんのカフェでアルバイトを始めることになったのだった。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

133人が本棚に入れています
本棚に追加