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真由さんの言葉に顔を上げると、優しい洋楽が低く流れる店内の奥から、白いシャツにネイビーのエプロン姿の青年が歩いてきた。
手に持ったトレイの上にはティーカップがふたつ。
「わたしの甥の明よ。少し前から店を手伝ってもらってるの。美羽ちゃんと一緒に仕事するから仲良くしてね」
真由さんの……甥?
青年はティーカップをわたしの前に置くと、すこし不器用そうに頭を下げた。
「月野 明です。…よろしく」
「はじめまして、わたし、皇 美羽です。これからお世話になります。よろしくお願いします」
自己紹介と挨拶すると、明さんは大学二年生で、わたしよりふたつ年上だと聞いた。
「美羽ちゃん、わからないことがあったら遠慮なくわたしや明に聞いてね」
真由さんは一通り店の中を案内して、接客について教えてくれた。
「ここは癒しのお店なの。お客様がのんびりゆったりと寛げるようにお手伝いしてあげてね。笑顔でお帰りいただければ嬉しいわね」
奥にはテーブル席。手前はカウンターがあって、お客様はそれぞれの場所で思い思いに本を読んだり、明さんと話ししたりしていた。
雰囲気が柔らかくて居心地がとてもいい。
わたしも知らず知らずのうちにニコニコしていた。
「美羽ちゃん、その笑顔でよろしくね」
こうして、真由さんのカフェでアルバイトを始めることになったのだった。
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