ヒロシさんの幻視

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ヒロシさんの幻視

レビー小体型認知症のヒロシさん。 彼のお部屋は4階の二人部屋です。 入居して暫くしてから、奥様が入居されました。 呼吸器の病気で入院されていました。 在宅酸素を24時間付けています。 奥様が入院された為、先にヒロシさんが入居されました。 ヒロシさんのお部屋は、自殺された方のいたフロアです。 ある日ヒロシさんを、夕食の為にお声かけに伺いました。 まだ、奥様が入院されている時の事です。 一緒にエレベーターに乗り、1階のレストランに行く時です。 エレベーターの扉は、ガラスになっています。 エレベーターに乗りこんだ直後の事です。 ヒロシさんが、エレベーターの扉を指さして、 「あの方は、乗らないんですか?」 私は、何も見えませんでした。 「誰もいませんよ。」 私がヒロシさんに、そう答えると、 「僕と同じ歳くらいの男性がエレベーターの外に立っているよ。」 私は、自殺された方を思い出しました。 鳥肌が立ちました。 ヒロシさんの幻視と信じています。 夜勤は1人で、巡視を行います。 24時、2時、4時に行います。 夜間は消灯された暗い廊下を、懐中電灯を持ち、巡視します。 4階は、空き室が多いのです。 2階3階4階が居室になっていますが、上の部屋は料金が高いからです。 ホラーの話ではないので、このくらいにしておきます。 次回は、私が認知症実践者研修で学んだ事を書いていきます。
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