古畑任三郎のようなヒロシさん

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古畑任三郎のようなヒロシさん

レビー小体型認知症のヒロシさん。 A施設に入居されていた方です。 話し方と声が、田村正和さん演じる古畑任三郎にそっくりでした。 まだお若い方で、60代位でした。発症は50代との事です。 ヒロシさんは、1階にある受付カウンターに来てスタッフに、 「ちょっとすみません。今何時ですか?」 と尋ねます。 スタッフが答えます。 「ヒロシさん、今は、○時○分ですよ。」 また、5分と経たないうちにヒロシさんは、スタッフに尋ねます。 「ちょっとすみません。今何時ですか?」 そのやり取りを、一日中延々と続けます。 始めのうちスタッフは皆、 「古畑任三郎みたい。」 と笑っていました。 忙しいスタッフは、次第にイライラしてきます。 「だーかーら、ヒロシさん、さっきも言ったじゃないですかー、 今は、○時○分ですよ。」 そんな事をスタッフに言われてもヒロシさんは、時間を聞いた事を忘れてしまっているので仕方がありません。 「だーかーら、ヒロシさん、さっきも言ったじゃないですかー、 今は、○時○分ですよ。」 と言うよりも私は、 「○時○分です。」 と答えた方が短い言葉で済むのに、余計な一言だと思いながら、 ヒロシさんとスタッフのやり取りを見ていた。 イライラしながら答えるスタッフに、ヒロシさんも怒り出します。 「君のその態度は、なんだー」 ヒロシさんは、利用者様であって、つまりお客様です。 それに、私達スタッフよりも年上の人生の先輩です。 売り言葉に買い言葉じゃないけれど、笑顔には笑顔です。 介護関係の会社では、研修で接遇マナーを学びます。 接客ではなくて、接遇です。 [接客は、利用者の対応をすること自体を差し、状況に合わせて対応できることや、利用者の意図するサービスを提供することなど。 接遇とは、いわゆる「おもてなし」の気持ちのことを指し、身近な人や思いがけず出会った人に対して心が通じ合うようにすること。 企業においては、接遇マナーの良し悪しが業績に直結すると言われるほど、企業イメージやブランド力への大きな影響力を持っています。] 先日、会社で行われた研修資料に書いてあります。 次回は、ヒロシさんの幻視についてです。
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