ある晴れた日に

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一度は夢見た小説家という生業の近くで働けるということはとても素敵なことで幸せなことだ。だけど出版社はそんな簡単に就職できるものではない。最初から小説担当になることは基本的にはなく、他部署を経て配属されると聞く。  「話を通してるのは分かったけど、そんなこと今働いてる人達が許すわけないと思うわ?みんながみんな小説を担当したいと思っていないかもしれないけど」 あの〜ととても気の抜けた伸ばし口調の声が北原君との間に流れた。 「いま、北原の編集担当をしてる上原(うえはら)と申します。はじめまして〜話し合いがデットヒートしそうでしたので間を割らせていただきます。」 上原と名乗った人物はまずはこちらをと名刺を私の目の前に差し出す。社会人として座ったまま受け取るわけにはいかないので立ち上がり両手で受け取った。 「上原巧(うえはらたくみ)と申します。」 「恐れ入ります、蒼真莉と申します。本日はプライベートの為名刺持ち合わせておらずご了承下さい」 「さて、本題に入らせて頂きたいのですがよろしいですか?」 座るように促され私はまたイスに腰を下ろした。 「北原から聞きました。弊社から出版した皆無についてとても熱く語られたと。」 「一個人の感想を申し上げただけです。特に有意義なことはなにも」 そんなことないと間に入ろうとした北原君を目線だけで黙らせて、凄いなと感心してる私にまた話を始めた。 「僕はこの作品、ハッキリ申しますと、理解できておりません。新人賞を受賞したのも何かの間違えではないかと思ってるほどなので」 それは、ハッキリ言いすぎなのではと思いながらも相づちをつく。
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