ある晴れた日に

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「人は新しいものがりで、飽きれば次にいってしまいます。今蒼さんが読まれてた作家さんはシリーズものとして連載することに成功している方ですし」 「私の作品を読んで頂けたと聞いてます。今ここでその感想を聞くことは野暮ですので伺いませんが、それを踏まえた上で彼の編集者にという話になるのかご説明は頂けますか?」 「現在の弊社は、ワンマン社長気質です。勿論、パワハラなどがあるわけではありません。所謂実力主義ってやつです。本当ですよ?」 私が疑わしい顔をしたのか念を押す上原さんに分かったと言うように強く頷いた。 「ということはつまり、貴女の実力が認められれば北原の編集者になることは可能です。僕はその力があると思ってます」 そういって上原さんはそこら辺で見る機会のないアタッシュケースの中から少し黄ばんだ原稿を取りだす。そこには見慣れた文字で「未来への逃避」とある 「……本当に原稿を持ってたんですね。半分冗談だと思ってました。」と苦笑いを浮かべる私をよそに上原さんは話を続ける。 「僕はこれを読んだ時、身体に稲妻が走ったんです。売れるというよりも、こんな作風があるんだと今までにない新しい文芸が始まるそんな気がしました。ですが、前社長には全く相手にされず結果は貴女の知る通りです」 「現社長は違うとでも言うのですか?」 ゆっくりと強く縦に首をふった上原さんと同時にドアのベルの音が鳴り響いた。 「いやいや、すまない。ちょっと道に迷ってしまってね、遅刻してしまったか?」
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