ある晴れた日に

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「おっと、これは失礼したね。lady、許してくれ」 手をそっと離され、私はその手を元に戻した。一体あの空間は何だったのか考える間も無くおじ様、ではなく社長さんは言葉を続けた。 「君の経歴はすでに調べさせてもらってるよ。申し分ないレベルだ。実はね北原君と上原君に話を聞いたときはそんなこと出来るかと跳ね飛ばしたんだ。」 やっぱりと呟いた私に、机に置かれた原稿用紙をトントンと優しく叩いた。 「けど、上原君にこれを見せられてね。決めつける前にこれを読んでくれと絶対に僕たちの判断は間違ってないというんだ。そんなに熱く言われたら読むしかないだろ?」 「内容は今でも覚えてます。何度も、何度も修正して作り上げたものなので。」 「「人はいずれ死ぬ時が来る。その時に私は無機質な白い部屋のベットで独りなのか、愛する人達と共に居られるのか、それとも誰にも愛されず独り消えていくのかそれは分からない。」」 北原君と上原さんがほぼ同時に私の書いた小説のラストを口にする。ビックリすると同時に恥ずかしさに隠れたくなるとこの前も同じ状況になったなとデジャブを感じた。 「けど貴方も、後悔のない人生を送ってみませんか?私は選んだ道に後悔をしない。挑戦し続けることが後悔しないことだから」 あとを引き継いだのは社長で、私の頬にひと筋の涙が落ちてその涙を北原君が親指でぎこちなく拭った。
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