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綺麗のステップ
「このみ、入るよ」
このみの自室の外から姉である美江子の声が聞こえてきた。
「良いよ」
このみは返事をした。その直後、美江子が部屋に入ってきた。
「はい、これ」
美江子は箱をこのみに手渡した。
「これって……」
このみは箱の表紙を見た。
ニキビに効き美肌になれることで有名な化粧水、美容液、クリーム、洗顔フォームが入っている。
「それには、ニキビにも効果があるから」
美江子は言った。 このみはここの所ニキビに悩まされている。洗顔をしてから薬を塗ったりしている。
「私もこれを使えばお姉ちゃんのように綺麗になれるかな」
このみは言った。美江子はこのみが羨ましくなるくらいとても綺麗な肌をしている。
「きっとね、あ、言っておくけど肌に問題が出たらすぐに使用はやめてね」
美江子はこのみの心配をした。
「分かったよ、買ってくれて有難う」
このみは心から美江子に礼を述べた。この化粧水はそこそこ値が張るため、少ない小遣いでやりくりしているこのみでは安易に手を出せない。
バイトをしたい所だが、母からは学業に支障が出るからと禁じられている。
よって、社会人である美江子に買ってもらったのだ。ちなみに母でも良かったが、話しやすい姉に頼ったのである。
「大事に使ってね」
「うん」
美江子はこのみの部屋から出て行った。
「よし、早速今日の夜から使ってみよう」
このみは張り切って言った。
その夜からこのみは美江子が買ってくれた洗顔フォームを入浴時に試すことにした。泡立ちが良く洗っていて気持ち良かった。
風呂から上がり、次に化粧水、美容液、クリームという順番で肌に付けた。ニキビ薬は使うのをやめた。
スキンケアを始めてから二週間が経過してから、効果が現れたと実感し始めた。あれほどこのみを悩ませたニキビはほぼ消え、肌にもツヤが出始めた。美江子や母にも綺麗になったと、父には彼氏が出来たのかとも言われた。学校では友人にも羨ましがられ、どんなスキンケアをしているのかと聞かれた。このみは化粧水を変えた答えた。
このみにとって嬉しい出来事は更に続いた。このみが気になっている男子の麗次に放課後呼び出されたのだ。
「……急にどうしたの?」
このみは訊ねた。麗次とは普段あまり話さないため声にも緊張が含まれている。
「ごめん、驚いてるよね」
麗次はやんわりと言った。
このみと麗次は今人気のない学校の裏庭いた。
「そ……それで話って何?」
「その事なんだけど、武井さん最近キレイになったなって思って……」
麗次は視線を泳がせて照れ臭そうに口走った。
このみは頬が熱くなった。麗次に誉められたことが嬉しかったからだ。
麗次はこのみを真っ直ぐ見据える。
「ずっと前から武井さんのことが気になってたし……こんな俺で良かったら付き合って下さい!」
麗次はこのみに頭を下げた。
麗次の告白にこのみは驚き、言葉が出なかった。どう答えようか迷った。
麗次は女子にも優しく気遣いのできる人間なので、付き合うには問題はない。ただ突然の出来事にこのみの思考が追い付かない。
しばらくして麗次は頭を上げた。
「ごめんね、いきなり過ぎるよね」
麗次は再び謝った。麗次の言葉にこのみの思考は動く。
ここで胸に秘めてる想いをことを口にしないと後悔するとこのみは思った。
「う……ううん、そんな事ないよ、私も前から小島くんのことが気になってたんだ」
「じゃあ……」
「小島くん、こんな私でも宜しくお願いします」
このみは明るく返した。
このみは麗次と付き合えることが心躍るように嬉しさが沸き上がった。これもスキンケアをした結果で化粧水のセットを買ってくれた姉には改めて感謝したくなった。
見た目が綺麗になることで、良い方向に変化するんだなとこのみは思った。
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