24人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
凜は僕がジョーイの家に来ることをとても喜んでくれた。
「二人でいたいのに、邪魔じゃない?」って聞いたこともある。
「逆に居てくれた方が助かるかも」
そんなことを言われたことがあって。
「なんで?」って尋ねたら、
「ジョーイが甘すぎて心臓がもたない」って。
「それって惚気?」って聞いたら、
「甘やかされるのに免疫がないから」と答えてきた。
「日本で付き合ってた人いないの?」
この質問に凜は答えなかった。この答えは後々、イヤと言うほど詳細に知ることになるんだけど。
凜はいろいろ頑張っていた思う。妊娠して少しずつお腹が大きくなっていく凜。僕には兄弟がいなかったから、血のつながりはさておき、妹か弟が生まれてくるっていうちょっとしたワクワク感もあった。悪阻が苦しそうな時もあったけど、ジョーイの前では、いつも殆ど笑顔だったし。
ジョーイにはなかなか言えない口答えや小競り合いも、凜は姉のように受け止めてくれたし。
凜には妹がいるらしいけど、あまり話したがらなかった。
元カレといい、彼女の日本での生活はあまり楽しいものではなかったのかな?って勘繰りたくなるくらい。 まぁ、これもどうしてそうなったのかっていう経緯がよくわかるイベントが後程起こることになったんだけど。
凜に子供が生まれた時、僕はすぐに駆け付けた。病院でガラス越しに目の開かない小さな生き物を見た時の感動は今まで経験したことのなかったものだった。ジョーイはとても嬉しかったらしく、僕を思いっきり抱きしめた。久しぶりにハグされたのだけど、ジョーイの体は驚くくらい薄くなっていた。こんな頼りない体だったろうかと、すごく悲しくなったのを覚えてる。ジョーイは少し泣いたんだと思う。あったかい感動で一杯だった僕の心はとても小さくしぼんで、ちょっとずつ冷えていくのを感じたんだ。ジョーイはもう少ししたら、本当にいなくなる、それを実感していた。
最初のコメントを投稿しよう!