訪問者

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訪問者

新米ママの凜は毎日がパニック状態だった。頼れるのはジョーイだけ。でもジョーイは病人だし。 母乳があまり出なかったらしくて、慣れないミルク作りやオムツ替え、加えて赤ちゃんの夜泣きで常に睡眠不足みたいだった。ジョーイの病状も悪化していってたし。見かねた僕から少しの間だけ、凜をサポートするために同居の提案をしたくらいだったから。 学校から帰ると、僕がノアの面倒をみる。凜は最初、遠慮してたけど、その間だけ少し休憩を取るようになった。ソファーでちょっと横になる程度だったけど。凜の寝顔はやっぱり実年齢よりも僕の年齢に近いように見えて、いつからかその顔にキスしてみたい衝動を抑えるのが大変だったけど。僕に対して、警戒の欠片もない。昔から無自覚系。僕だって、もう凜を襲うくらいの体力あったんだけど。 そのころにはジョーイも自宅療養になっていたから、その様子も看なきゃいけなかった。凜と一緒にキッチンに立ったり、共有する時間が増えてくると、ジョーイが凜と結婚した理由もわかってきた。一生懸命なんだよね、でもかなり不器用で。自分は大丈夫って思ってるみたいだけど、そんなの意地張ってるだけで、()の凜はたまに悲しくなるくらい真っ直ぐで全然強くない。 凜がノアの検診と予防接種で外出している時、一人の日本人が訪ねてきたことがあった。日本人の割に背が比較的高い、眼力(めじから)の強そうなクールというか愛想のない、冷たい感じのする人だった。凜より年上?正直、第一印象はあまりよくなかった。訂正、第一印象。ジョーイとその訪問者は2時間近く、部屋にこもって話をしていた。凜からそろそろ帰るとメールが入る。僕は様子を見がてら、ジョーイに凜が帰ってくることを伝えにドアをノックした。 「凜が帰って来るって」 僕はドアを開けて、ジョーイに声をかける。 ジョーイは訪問者に『会っていくか?』と聞いていた。 凜の知り合い? 冷たかった訪問者の彼の目の揺らぎを僕は見逃さなかった。 日本からやって来た凜の知り合い。。。。。そうゆうことだよね。
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