6

8/10
前へ
/65ページ
次へ
この高揚感は、周りの空気に飲まれているからだけじゃない。 今だって、アップを終えた良くんが控え室に向かう時に、目が合い、心臓がドキンとした。 「すごい盛り上がってるね。始まるのが楽しみ」 「うん。本当」 しばらくして、チアリーダーに迎えられ、メンバーが入ってきた。モニターに映される選手紹介、登場のライトアップ。演出が会場のボルテージを一気に上げていく。 バンバンと響くメガホンの音。 試合が始まってしまうと、私も夏実も夢中になった。 目まぐるしく変わる攻守に、10分のクォーターはあっという間に過ぎていく。 初めてだったので、掛け声など戸惑う事もあったけど、見様見真似で声を出す。 止む事のない歓声。野球観戦とは全く違う興奮がそこにあった。 私の目は、常に良くんを追いかけていた。 パスを受け、素早くゴール下に入ったかと思えば、シュートを打つ背中。 大きな外国人選手を交わし、3Pシュートを打つ手。 ノールックでパスを回す表情。 メガホンを握った手に力が入りっぱなしだ。 結果、オルカは19点の差をつけ、勝利を収めた。 この日の最多得点を取った良くんに、大きな拍手と「リョー!」と歓声が上がる。その歓声に両手を上げながら、いつもの様にペコっと頭を下げて応える。 やっぱり、すごい人だ。 それでも、40分の試合中、何度か目があったのは気のせいではなかったはずだ。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加