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麦茶を持って、良くんの座るソファーへ行く。 もう、ソファーの右端は、彼の定位置になってしまった。 「どうぞ」と、テーブルにガラスコップを置きソファーに座ると、 いつかの様に強引に抱きしめられた。 良くんのスキンシップはいつも突然だ。 私が固まっていると、良くんの身体が少し離れ、大きな手が私の頬を撫でた。 驚きと共に顔を上げると、漆黒の瞳がゆっくり近づいてきた。視線がふと逸らされ、私の唇あたりを見て、静かにキスを落とされた。 離れた唇。 覗き込まれた視線に私も目が離せない。その瞳は許可をとっている様にも思え、おろしていた手で、そっと良くんの腕を触る。 次の瞬間、もう1度口づけされる。今度は深く、長く。 大きな手は私の後頭部をすっぽり包んでいる。 長く、短く、何度も落とされるキス。 最後、目元にキスされたかと思うと、抱きしめられ 「今日、泊まっていい?」 と聞かれた。 「うん。いいよ」 ゆっくりうなずく。 良くんの胸に顔を埋めている為、こもった声になる。 耳元で「ふっ」と彼から小さく笑ったのが分かった。 そして小さく「ありがと」と、聞こえた声に、何だかすごく、泣きたくなった。
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