3・求不得苦の月

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 亮翔は一気に気持ちを吐き出し、次いで溜め息を盛大に漏らす。千鶴と知り合ってから、自分の気持ちは乱れっぱなしだ。つい美希の面影を探し、千鶴に対して八つ当たりしてしまう。もう自分の前に現れないでくれと思いつつ、こうして旅行に行くことは了承してしまう。そんな不甲斐なさだ。 「それって、お前、中森に恋を」 「ねえよ」 「あっ、そこは瞬発的に反論するんだ」  弱々しく語ったかと思えばしっかり睨んでくる亮翔に、八木は苦笑してしまう。しかし、千鶴の存在が亮翔の心に大きな変化をもたらしたのは確かなことというわけか。 「無理に忘れる必要はないんだろうけどね」  しかし、今の亮翔を見ていると辛そうだ。坊主になったことさえ、辛い選択の末だったのだろう。それは今の告白で確信した。となると、忘れることは無理だろう。だが、このままではずっと亮翔は同じ場所で留まったままなのではないか。そんなことを懸念してしまう。 「何でだろうな。坊主になったことさえ駄目だったっていうんなら、俺はどうすれば美希のことを、過去のことに出来るんだろう」  それは亮翔も気づいていて、そんなことを呟いてしまう。相手が過去を色々と知っている先輩だからか、つい、本音が漏れてしまった。恭敬は美希の父親だし、こんなことは言えない。
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