97人が本棚に入れています
本棚に追加
「千鶴、どうしよう。やっぱり駄目かも」
「えっ?また彼氏とケンカしたの?」
くそ坊主との出会いから半月、中森千鶴は自分の目の前で溜め息を吐く友人に呆れていた。場所は千鶴が通う、私立聖因学園高校の二年三組の教室。昼休みのお弁当タイムの最中のことだ。
「またって、そう、またなのよ。ここ最近はもうずっと私が怒りっぱなし。どうしたものかと、そう悩む日々よ」
友人、宮脇琴実は千鶴の呆れなんて気づかないかのように、タコさんウインナーを口に運びながら愚痴を続ける。恋に悩む乙女も腹が減るのだ。
「ううん。何だったっけ、彼氏の態度が最近おかしいってやつでしょ。で、琴実は浮気でも疑っているわけ?」
千鶴も弁当に入っていたミートボールを食べつつ訊く。琴実は駄目だと言い続けているが、その原因を覚えていなかった。というより、あのくそ坊主事件のおかげで、色んなことがすっ飛んでしまっている。
「浮気ではない気がするのよね。ううん、浮気なのかな。でも、明らかにおかしいの」
「へえ」
要するに具体的には何も解っていないのか。でも駄目だと思うほど深刻に悩んでいると。千鶴は思わず首を傾げた。一緒にポニーテールにしている髪も揺れる。
それってどういうこと?
「初めに気づいたのは一か月前だったかな。一緒に道後温泉に行ったって言ったじゃん」
「ああ。春休みだよね」
最初のコメントを投稿しよう!