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千鶴の感想に、恭敬は振り向くと苦笑していた。どうやらその辺りは亮翔に任せきりらしい。
「車だとあっという間だね」
「そうね。電車だと二十五分は掛かるもの。バスだと三十分以上よ」
「じゃあ、毎日の通学は大変だね」
百萌は何でもないように言うが、徒歩圏内に住んでいる千鶴はびっくりしてしまう。通っている私立聖因学園は県内では有名私立とはいえ、わざわざ通うのは大変そうだ。とはいえ、老舗旅館のお嬢様となれば私立に行くのは当たり前か。むしろ千鶴がイレギュラーだ。
「まあね。でも電車に乗っている時間は好きだし、中高一貫って魅力でしょ」
「そうなのよ。しかも地元の中学の噂が良くなかったから」
百萌の言葉に千鶴は大きく頷き、うちの地元の中学は二個上の学年が荒れていたからなあと溜め息だ。そう、そんなトラブルがなければ聖因学園に通うことはなかっただろう。これも縁か。因みにその進学には祖父が一番乗り気で、お金は心配するなと言ってくれたので、一般的なサラリーマン家庭である両親にしても問題なかったらしい。
「聖因学園出てるってのがブランドだもんね」
「そうよね。住職の娘さんの美希さんも聖因ですか?」
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