2・阿頼耶識の恐怖

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「ええ、そうですよ。あそこは仏教系の学校ですからね。それも一つの要因です」  恭敬はにこやかに教えてくれた。となると、美希さんは先輩か。今いくつ何だろう。遠くに行っているということは、もうお嫁さんに行ったということかな。ああ、だから亮翔は千鶴の顔を見て面白くなさそうな顔をするのかと、勝手な考察を進めてしまう。 「温泉街の中は車どおりも多いし観光客もいるので、石手寺さんの駐車場をお借りしましょうか」  道後温泉が間近に迫り、亮翔がそう恭敬に訊く。石手寺とは四国八十八か所霊場の一つで、第五十四番札所だ。願孝寺はお付き合いがあるということか。 「そうだなあ。篠原さん、旅館はどの辺ですか?」 「はい。石手寺からだと遠くなってしまうので、温泉街を車で突っ切ってもらった方がいいです」 「なるほど。じゃあ、山手側か」 「はい。坂が急なので、皆さん車でお越しですし」 「了解」  こうしてそのまま車で温泉街へと入っていく。窓から外の様子を見ていると、浴衣姿のカップルや家族連れの姿が多く見られた。さすがはゴールデンウイークの観光地。 「賑わってますねえ」  恭敬も同じことを思ったようで目を細めている。
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