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連休中とあって忙しい旅館だが、何とか百萌の父と祖父を捕まえることに成功した。すでに願孝寺の坊主が行くと連絡していたこともあり、嫌な顔はされなかったが、それでも娘が坊主を連れてきたとあって不安そうな顔をしている。
場所は旅館に併設されている百萌の家。つまりプライベート空間だ。車は旅館に止めさせてもらったが、さすがに込み入った話を旅館のロビーでするわけにはいかないと、こちらへと移動したのである。
その居間にて、六人は向かい合うように座っている。八畳という大きな畳の間だが、これだけの人数が入るとぎゅうぎゅうした印象があるなと、千鶴はそんなことを思う。大人の男の人が四人もいるせいだろうか。
「今回は娘が何か」
百萌の父、直義が不安そうに亮翔と恭敬を見る。一体何を相談したのか、それは亮翔が大事そうに巻物を抱えていることから明らかだろう。やはり、直義はあの巻物を恐れているということか。
「はい。今回は願孝寺で行っております、相談室に百萌さんがいらっしゃったんです。ああ、相談室と言いましても堅苦しいものではなく、お茶とお菓子を食べながら気楽にお喋りするだけの場です。そこで百萌さんはこの巻物に描かれている仏様は一体誰なのか、相談されたというわけです」
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