2・阿頼耶識の恐怖

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「やはりそうでしたか。倉庫を整理されていてこれが出てきた時、徳義さんも、そして直義さんも怒られているような気分になったわけですね。それが百萌さんの目から見れば怯えているように見えてしまった。まさに阿頼耶識に組み込まれた、無意識に戒められていたことが思い出されたわけですか」  亮翔の言葉に、徳義はそのとおりですと頭を下げる。なるほど、何かをやってしまった後に、タイミング悪くこの絵が出てきたのか。そりゃあびっくりして怖がってしまいそう。しかし、それほどまでに怖がる理由は何だったのか。 「それで、お二人はどのような反省すべきことをしてしまったのですか?」  亮翔はそう言って巻物をそっと畳の上に置き、掛けられていた風呂敷を解いた。それは今からあの大威徳明王を広げるぞと脅しているように取れる。当然、徳義と直義の顔色が蒼くなった。よほど昔、脅かされているのだろう。  千鶴もまだ幼稚園児だった頃、祖父の家の仏壇の前にあった大きなお鈴を鳴らして遊んでいたら、お経を読まずに鳴らすと夜中にお化けが捕まえに来るぞと脅されたものだ。おかげで未だにあのお鈴が不気味なものに見えてしまう。お化けは信じていないが、無意識に、つまり阿頼耶識の中で怯えているわけだ。
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