2・阿頼耶識の恐怖

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「まず香炉はお香を焚くための小さな器のことですよ。最近ではアロマブームで、雑貨店にも小さなものが売っていますよ。今度雑貨店に入った際に確認してください」 「あっ、あれか。三角錐のお香を入れて煙が出てくるやつ」  確認するまでもなく、この間がっくんと入った雑貨屋さんにそれがあった。ああ、あれって香炉というのか。これは覚えておこう。 「ええ。厳密にはそれとは違うのですが、そのイメージで大丈夫でしょう。さて、砧青磁ですが、これは青磁の中でも最高峰と呼ばれているものです。青磁は青みがかった色合いをしているのですが、その中でも綺麗な色だということですね。正確には龍泉窯で南総時代に生み出された様式のことを言うそうですが、単に一番上等な青磁という意味で使う場合もあるそうです。あっ、これは京極夏彦という作家が書かれた本にありました」 「へ、へえ」  どの本に書かれていたかも覚えているのかと、千鶴はドン引きだった。しかし、綺麗な青色の、それも上等だと言われる青磁の香炉か。ちょっと見てみたかったなと思う。 「見たかったなあ」  横で百萌も不満そうに口を尖らせた。そこまで綺麗と言われたらちょっと見てみたくなるのは誰でも同じだ。
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